最高裁判所第一小法廷 昭和34(オ)963 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人弁護士矢留文雄の上告理由第一点、第二点について。
しかし、原判決は、判示主張に対し判示のごとく説示しているだけであつて、所
論第一点主張のごとく代表取締役たる職務権限の会社内部関係を理由として第一前
提たる職務違背を否定していないし、また、所論第二点主張のごとく他の取締役の
背任行為の存在とこれが防止放置だけが賠償要件だとはいつていない。所論引用の
判例もすべて本件に適切でない。されば、所論は、原判示に副わない主張を前提と
するものであつて、採ることができない。
同第三点、第四点について。
原判決が、判示会社の業務の運営に当りDに背任行為(善管義務及び忠実義務違
反の各所為)のあつたことについては、控訴人の主張、立証がなく、却つて、前掲
各証拠によれば、同会社の倒産はDの背任行為によるものでないことが認められる
旨判示したことは、所論のとおりである。そして、その判示は、本件の審理の経過、
並びに、証拠関係に照し肯認でき、その判示の前段と後段との間には所論の理由齟
齬の違法は認められない。また原判決認定の事実関係の下においては会社内部関係
において原判示代表取締役間の職務分担ないし代表権の制限があつた場合には右D
に背任行為があつてこれが会社の倒産の原因をなしているのに被上告人が故意又は
重過失によつてこれを放置したというような事実がない限り被上告人には上告人主
張のような損害賠償責任がないとした原判示は首肯し得る。されば、所論も採るこ
とができない。
同第五点および第七点について。
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しかし、原判決は、被上告人が所論のように虚偽不実仮装の代表取締役である旨
判示していない。それ故、所論は、いずれも、その前提を欠き採用できない。
同第六点について。
しかし、原判決は、理由中民法上の不法行為による損害賠償の判示原因に対し、
被控訴人が自ら法規違反の違法行為をなし又はDの該行為に加担し同会社を破産状
態に陥らしめたとかいう場合ならばともかく、被控訴人の右行為は未だ行為の違法
性を認めしめるに足りず、民法上の不法行為を成立せしめるに由ないから、控訴人
の本訴請求はその主張自体理由がないと判示しており、その判示は正当として是認
べきる。所論引用の判例は、本件に適切でない。それ故、所論は採ることができな
い。よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で主文のと
おり判決する。
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 斎 藤 悠 輔
裁判官 入 江 俊 郎
裁判官 下 飯 坂 潤 夫
裁判官 高 木 常 七
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